仔犬~成長期の食餌管理【一生取り戻せない骨の形成】
目次
「仔犬は食べたいだけ食べさせてもいい」はもう古い
新型コロナウィルスの感染拡大の影響か、仔犬を迎えた方からのご相談が増えています。
始めて飼う方もいれば、経験のある方もいますが、かつて仔犬~成長期の犬を育てた頃から10年以上、中には20年近く経っている方もいて、フード選びに迷う方が増えています。
20年前と比べフードのバリエーションは多彩になり、動物栄養学も進化しているので、
「何年も飼っていたから知ってるよ」
という方も、ご参考までにお読み頂けると嬉しいです。
手作り食で育てると栄養不足になる?
これは成犬になっても言われ続けますが、都市伝説と言っても過言ではないでしょう。
かなり極端な栄養バランスの乱れがない限り、病気になったり成長不良になることはありません。
むしろ離乳食などは、経口耐性を作り、アレルギー発症のきっかけを作らないよう手作り食をお勧めしたいです。
そもそも人間の子供でもそうですが、野生動物の子供がいきなり複雑な食材で構成された食事を摂ることはあり得ません。
少ない種類の食材を、消化の良い水分たっぷりの状態にしたものから始めます。
そして徐々に食材の種類を増やしていくことで、腸壁の栄養吸収口サイズも母乳から肉・魚や野菜などの食材に対応できるよう小さくなっていきます。
極端な話、この時期を正常に過ごせれば、多少問題のある化学物質が入ってきても、排泄できるようになります。
その仕組みができれば、その先大型犬でも10年以上小型犬なら20年近く健康に過ごすことができるでしょう。
ところが多くの仔犬用フードは、成犬用と変わらない原料構成で、タンパク質や脂質も多くなっています。
またビタミンやカルシウムの添加も多くなっていますが、これらが肥満の増加や骨格の問題を引き起こすことが指摘されています。
確かに多くの栄養が必要な時期だが・・・
仔犬は短期間で体重が2倍になるので、より多くのタンパク質やビタミン・ミネラル類が必要です。
ただ、今一般的に設定されている量はやや過剰だと考えます。
「成長期なんだから不足するよりいい」
「子犬は食べるだけ食べさせていい」
という話は、昔勉強している時代によく聞いていましたが、嗜好性の高いフードやおやつが増えた今、人間の子供同様、成長期に食べたいだけ食べさせていたら、脂肪細胞も多く作られてしまい、将来に渡って
・肥満
あるいは
・太りやすい
という悩みが付きまとうことになります。
獣医療の発達で、病気になっても高齢になっても元気に過ごせるようになりましたが
肥満が伴うと、治療も健康管理も難航します。
特に関節炎などは、リハビリの前に減量が必要になるケースも増え、仔犬~成長期の栄養管理の重要性が昔とは違う意味で注目されています。
栄養過剰が引き起こす問題
一般のフードのタンパク質が多すぎるのは、
『植物原料の割合が多い=消化が悪いタンパク質なので多めにないと不足する』
という製造側の意図が見えます。
しかし今は動物性のタンパク質中心のフードも増えていますが、そういうものでも多すぎると感じるものがほとんどです。
過剰なタンパク質が筋肉や骨格形成の成長を早めることはなく、過剰分は脂肪へと変換されて蓄積するだけです。
成長期用のフードは脂質も多めなので、ダブルパンチです。
また過剰なタンパク質とビタミン・ミネラル類は、多くの整形外科上の問題を引き起こすことが分かっています。
それは肥満からくる関節炎だけでなく、関節を形成する段階で多くの問題を起こします。
大型犬に多い股関節形成不全を筆頭に、膝や肘関節の接合不全、また好酸球性汎骨炎の原因も栄養過剰が一つではないかと考えられます。
また頸椎の問題で神経機能が失われ、歩くときによろめくような病気がありますが、それも成長期の栄養過剰で頸椎の骨が正しく形成されなかったため、脊柱管が大きくなれず神経に影響が出ると考えられています。
このような問題は、成犬になってからの栄養管理では取り戻せず、主に外科的な治療でしか改善できないことがほとんどです。
そのため食餌以外に問題がなく、獣医師に病気の可能性もないと言われている場合
「食が細い」
「子犬なのにあまり食べない」
「他の兄弟と比べて大きくならない」
というのはあまり心配ありません。
それは自分の胃腸が無理なく消化吸収できるものを食べ、自然なスピードで成長しているということです。
まとめ
フードのパッケージに書かれた給餌量を参考にしている方も多いと思いますが、仔犬・成長期用の場合、平均15%~20%減らしてもいいと思います。
超小型犬や小型犬の場合は10%程度でも良いと思います。
すると当然、成長スピードはゆるやかになりますが、最終的な骨格に影響することはないでしょう。
もちろん骨格の問題は、遺伝的なものも左右しますが、成長期の栄養過剰もそれと同等かそれ以上に影響します。
成長って、ただ体重を増やすことではないのです。
骨格や筋肉、内臓、神経機能などを少しずつ作り上げることです。
そしてこれは犬の一生の生活の質にも大きな影響を与えるので、是非仔犬を迎えた方、そしてこれから迎える時は考慮して頂けると幸いです。